F1日本GPの観客動員数と観客の熱量は無関係

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2013年 F1日本GP 鈴鹿サーキット 3日間の入場者数 【 F1-Gate.com 】

鈴鹿サーキットは、2013年 F1日本GPの入場者数を発表。3日間の合計で17万1000人にとどまった。

鈴鹿での25回目の開催となった今年のF1日本GP。決勝日の来場者数は、昨年の10万3,000人を大きく下回る8万6000人となった。

3日間の合計でも昨年の20万8,000人を大きく下回り、2010年の19万人を抜いて過去最低の数字となった。

このニュースだけ見ると、F1人気の低迷ぶりばかりが強調されがちです。実際決勝日の交通、付近の道路の渋滞がいつもよりも少なかったことや、タクシー運転手のお話を聞く限りこの観客数が例年より少ないのは事実の模様。

しかし、しかしです。

2013F1日本GP in 鈴鹿サーキット 金曜日プチレポート【ワンダードライビング】

そしてお客さんの出足が速いこと速いこと。ピット出口のA席、1コーナー前のB席、シケインのあるQ席に最終コーナーのR席はほぼ埋まっており、金曜日とは思えないほどの人出。あれ、今年って日本メーカーも日本人ドライバーもいなかったよね? そうとは思えないほどの盛り上がりでした。

金曜日の感覚ではむしろ観客数が多いのではないかと思ったほど。この差はどこに?


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実は今回、日本メーカーも日本人ドライバーも参加していなかったために、来場したのは「純粋にF1が好きなファン」だったのです。メーカーがチケットを買ってばらまくこともないから、社員や子会社、関連会社の社員を動員して応援団を組織して貸し切りバスで乗りつけて、団体行動で同じ赤いコスチューム、旗をもって整列して席に座り、無表情で旗を振って、レースが終わると同時に席をたち、再び貸し切りバスに吸い込まれる、といった観客という名のサクラは皆無。

しかもこの3連休、東京ではモータースポーツジャパンが、日産ではGT-Rのイベントが行われるなどモータースポーツイベントがダブルブッキング。

イベント | MOTOR SPORT JAPAN FESTIVAL 2013

2013 SOB NISSAN Sportcar Meeting in SODEGAURA

こういったことも重なり、純粋にF1ファンだけが鈴鹿に集まったと考えてよいでしょう。まさに生粋です。

それだけに金曜日、いや木曜日のイベントですらもグランドスタンドを埋め尽くすほどの人の入りで、それをみたFIA関係者が

「韓国GPの決勝よりも、人が入っている」

と言ったほど。これ事実、ソースは米軍筋ならぬ、パドックでアルバイトしてた人から。

確かにね、ビジネス的要件、チケットが何枚売れたとか、売上はどうとかいうならこの観客動員数、来場者数はひとつの指標となります。

しかしエンターテインメント、モータスポーツの人気という面で考えるとどうでしょう。動員数が低下したから即人気が低下していると考えるのは早計です。

むしろ前述したようにメーカー関係者によるサクラの存在が皆無の今、そして決勝だけ見に来るのではなく土曜日から、いやもっと前の木曜日、いやいやセントレアにF1カーが入るときからウォッチしているよという熱烈なるF1愛好家がこれだけいるという事実に逆に驚かされるのです。

つまり熱量があるのです。

確かにスタンドは全部埋まっていません。グランドスタンドも完全に満席とはいえないですし、最終コーナーやS字、逆バンクにも空席は目立っていました。しかしだからといって、盛り下がっていたのでしょうか?

答えは否。

F1ドライバーの華麗なテクニックをみようと、金曜日のフリー走行では多くの人が1-2コーナーに詰めかけ、A席B席はほぼ満席。予選・決勝日は指定席でみなければなりませんが、金曜日はグランドスタンド以外は自由に見られるために好きなところ、見やすいところ、近いところで見たからですがその集中度たるや凄いものでした。

本当にみんな、F1が好きなんだなあ、と感心したほどです。

鈴鹿の見どころは観客だけではありません。オフィシャルの人の熱意も伝わってきます。

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2020年東京オリンピック招致で有名となった言葉「オモテナシ」。これを地で行っています。

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観客へのご挨拶、テキパキとした仕事ぷり、そしてファンサービス。どれをとってもまさに「おもてなし」。

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今年はF1ドイツGPを見に行きましたが、オフィシャルがこんなにも観客に対してアピールしたり、楽しませてくれるといったことはありませんでした。それだけに日本人が、鈴鹿が「特別な雰囲気」を持っているといっていいでしょう。そのことはF1レース関係者がツイッターでも数多く指摘しています。

ドイツにF1離れの傾向 | ドイツGP | F1ニュース | ESPN F1

しかし、今年のグランプリ初日の観客動員数は3万8,000人、土曜日が5万人、日曜の決勝レースが6万2,000人という低い数字だった。 2005年の決勝日には11万人だった観戦者が2008年には7万8,000人、2010年には6万5,000人と年々落ち込んでいる。

2012年の情報ですが、世界チャンピオンを抱えるドイツでも苦しい状況。2013年はベッテルが地元初優勝を遂げましたが、厳しいことには変わりないでしょう。

鈴鹿も興業的には苦しいと思いますが、逆にいえばこれがどん底。2年後再びホンダがF1に帰ってくることや、日本人ドライバーの登用があれば当然上向くことは必然。苦しいですが、鈴鹿サーキットにはふんばってもらい、再び盛り上げていこうではありませんか。

そしてこの数字だけみて「ほら、F1儲からないからやらなくて正解」と某メーカーが思ってくれれば幸いです。