これが問題の Perfumeのニューシングル「スパイス」のPV(フル)公式映像です。
問題の箇所は1:27くらいから。Perfumeの3人がテーブルの上に土足であがり、お菓子を踏みにじるなど食べ物を粗末にする演出表現があるところです。
特に古いタイプの人間であれば、一目みれば「ん?」と思うこと間違いなしのこの映像。当然ですが、物議をかもしてこんな反応も。
《拡散希望》Perfumeさん スパイス PVに関してのお願い - Perfumeさん スパイス PVに関して「食べ物を足で蹴る」
「食べ物を踏みつける」
「食べ物を投げる」といったような、
「食べ物を粗末に扱う描写」
が、今回のPVには見受けられました。(中略)
食べ物を粗末にしていいのでしょうか。
というよりも、「食べ物を粗末にする」描写が必要でしょうか?
もちろんそのようなことは許されませんし、必要だとも思いません。
ここまでは個人の解釈、意見、感じ方です。
ところが次にある提案をします。
こどもから、おじいちゃんおばあちゃんの年代にまで愛される、 そんなPerfumeさんのPVがこれでいいのでしょうか?そこで、私は考えました。
このスパイスのPVが挿入されるのは、
11月30日(水)発売のアルバム「JPN」です。まだ発売まで1ヶ月ほど時間があります。
1ヶ月あるので、アミューズがその気になれば、
PVの作り直し、PVの編集などが行えると思います。1ヶ月という期間が短いのであれば、
発売延期になっても仕方がないこと。それでも良いから、PVをどうにかする方法はないのか…。
(中略)
皆さんがP.T.A.(「Perfume と あなた」、Perfumeファンクラブの略称)のメッセージボックスを使い、
「新PV制作のお願い」または「現PVの編集のお願い」を
製作サイドに送る。
つまり
・PVを作り直す
ことを
・製作サイドにお願いする
という呼びかけです。
PVをみてなんとも思わない人も、眉をしかめるひともいることでしょう。それは人それぞれです。実際私自身、古い人間なので「あーあー」と思ったし、このことをブログに書こうと思ったくらいです。ただ一方でいちいちそれを取り沙汰するほどのことでもないな~と思ってました。
忘れかけた頃、「お願い」がツイッターで流れてきたので気付いたというわけです。
さてこの「お願い」に関してのコメント、ツイッターの反応は様々。賛否両論というよりも、賛同できないといった意見の方が多いように見受けられます。感情的な論争になりかかった中、秀逸だったのはこちら。
P.T.A.というのは「Perfume と あなた」という、Perfumeファンクラブの略称ですが、それとPTA(Parents Teacher Association)をかけたという素晴らしいツイート。
さらに、
私を踏んでください、というウィットに富んだ提案も。ウィットというよりもMっ気でしょうか、なんとなく分かりますw
なお、この映像表現に関する製作側の意図はこちら。
このことについて、今回、PVの制作を担当された島田大介氏から 解答をいただきました。解答は、
”自分たちの想像した色がない世界に退屈していく”という表現の為にみんなと念入りに話しあって決めました。でもカラフルな世界もついには退屈になって好奇心はまた元の世界へ繰り返される様に最後には元通りにさせたんですよ。
とのことでした。
当たり前ですが、表現のプロが解釈をめぐって色々な反応があることを見越してそれでもあえてああした、というのですから、それなりの覚悟があります。大人ですからね。
昨日になって事態は収束。
今回のPerfumeさんの新曲 スパイスPVについて 一連の問題について - Perfumeさん スパイス PVに関してあのような文章を書き問題を起こしてしまった
そのような私の書く文章を再びご覧いただけることに関して、
重ねて深く感謝致します。
呼びかけた方が謝罪しました。
さて、この一連の流れを整理すると色々と興味深いことが浮かび上がってきます。それは、
「なぜ食べ物を粗末にしてはいけないか?」
です。
実は余り指摘されていませんが、私が気になったのは
「土足でテーブルにあがっていけない」
です。裸足だったらいいのか? といわれると、これはグレー。
それはともかく食卓が何もないテーブルであったとしても、ハイヒールをはいたまま上がったらやっぱり嫌悪感がわくことでしょう。
その昔ドリフ、「8時だよ全員集合」のコントでヒゲダンスというのがありました。このヒゲダンスは志村けんと加藤茶がタキシードを着てツケヒゲをつけて、手を上下にかくかくさせながら単調な音楽にのせてダンスするものですが、もうひとつの見どころはここで食べ物を粗末にするという芸を見せる点です。
覚えている限りでは、
・生卵でキャッチボールをする
・果物を投げてサーベルで突き刺す
というもの。最初は数メートルの近い距離ではじめるのですが、だんだんと距離を離して行って、キャッチしそこねると、舞台に卵がどちゃーーーん、果物がバシャーンと破裂して汚れる、というものです。
もちろん成功すれば拍手喝さい、失敗すれば大笑い。このギリギリのスリルと興奮を子どもたちは楽しんでいて大人気でした。
ところがこれに待ったをかけたのがPTA。
「食べ物を粗末にするのはいけない」
「子どもが真似をする」
といった理由から圧力をかけて、このコーナーはあえなく終了となりました。
なにせ1970年代です。飢えてはいないものの、「もったいない!」の精神が強い時代。さらに昭和初期の世代がバリバリ現役で活躍しているので、石頭たちが自分たちの既成概念を上からガツーンと押しつけて自由な表現ができなかった暗黒時代ともいえます。
まいっちんぐマチコ先生も、巨乳を生徒たちにタッチされて
「いや~ん、マイッチング!」
と嫌がる風にしながら、実際には身悶え&嬉しそうという表現が女性差別である、性犯罪を助長するなどの理由からPTAが抗議、アニメ放送が打ち切りとなりました。
なので今回の騒動も「さすがはP.T.A」という返しはとても上手い表現なわけです。
「嫌悪感がわく行為」を総称して「禁忌(タブー)」と呼ぶとすると、ではタブーはどうやって定義されるのでしょうか。
日本ではタブーでも海外ではOK、逆に海外ではタブーだけど日本はOKというものはいくらでもあります。つまり禁忌というのはその社会や共同体での文化的規範です。
日本では不浄、穢れという概念があり、今回の件は食べ物を粗末にする(もったいない)上に、土足で踏みにじる、穢すといった行為が気に障ったのかもしれません。
これは呼びかけた「kashinoyukaa-channocchi」さんがその理由として、
今回のPerfumeさんの新曲 スパイスPVについて 一連の問題について - Perfumeさん スパイス PVに関して私自身でこう言うのもおかしな話ですが、
Perfumeさんを愛してやまないがために起こしてしまいました。
と「Perfumeが好きすぎて起こしてしまった」と告白しています。
Perfumeに対する純粋な愛が故の行動、また Perfume自身がもっている純粋さ。
これに対する「穢れ」。
つまりこのPVの行為を通して「Perfumeが穢す(穢される)」というイメージに恐怖したからに違いありません。いわゆる処女信仰に近いものがありますが、Perfumeがアイドルとしての純粋さを持ち合わせているところに、純粋なファン心理となるとまあややこしい話になりがちです。
過去には恋愛スクープもありました。
▼Perfume のっち に熱愛報道!! というアイドルの通過儀礼 ([の] のまのしわざ)
▼Perfume かしゆか 熱愛報道との噂 ([の] のまのしわざ)
▼Perfume かしゆか 熱愛報道で残るのは あ〜ちゃんの熱愛報道のみ ([の] のまのしわざ)
▼Perfume 直角二等辺三角形と熱愛報道とビューティフルドリーマーと ([の] のまのしわざ)
構造的には同じですね。
ということで、40過ぎてるオッサンからいえるのは、大人になるというのは痛みをともなうということなんだよ、です。そしてスパイスPVを作ったクリエイターは痛みをともなうことを恐れない、大人だったということです。
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