シビックハイブリッド:実燃費とホンダの考えるハイブリッドとは

今回の北海道旅行ではシビックハイブリッドをレンタカーで借りました。

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シビックハイブリッド MXB

走行40,000km
スタッドレスタイヤ装着(195/65R15)
Honda|クルマ│シビック|スペック

前回エディックスを借りて前三列シートがなかなか良かったのですが、1歳児にはちょっとはやくてその利点を活かせませんでした。今回子供が5歳になったので借りたかったのですが、生憎出払っているとのこと。

そこでスカイルーフが特徴のエアロウェイブを借りようとしたら、今度はスカイフール装着車がないとのこと。スカイルーフのないエアロウェイブなんて、エアロウェイブじゃなくって単なるフィットワゴンです。また前回のエディックスの燃費は4WDということも手伝って10km/Lと意外と伸びなかったことも思い出しました。ということで今回はホンダ最先端テクノロジーであるシビックハイブリッドにすることに決定。


・微妙な高燃費

千歳、札幌近辺、夕張往復(高速道路移動)、札幌-美瑛(高速道路移動)
- 16.6km/L = 533.9km/32.16L

美瑛・富良野・吹上温泉周辺(一般道、アップダウンあり)
- 14.6km/L(燃費計)
- 15.1km/L = 265.3km/17.61L

全行程
- 15.2km/L(燃費計)
- 16.2km/L = 840.3km/(32.16L+17.61L+2.00L)

参考:1300ccであるシティCZ-i(GA2 5MT)で北海道に来たときはだいたい16km/Lから19km/Lをマーク。エディックス(Edix 2.0 4WD)は9.7km/L~11.2km/L位でした。

噂のエディックス(Edix)のインプレッション ([の] のまのしわざ)

ホンダAX-1(250ccのバイク)で北海道来たときは30km/L。


・モーターとエンジンの回転特性の違い

シビックハイブリッドの構造は非常にシンプル、エンジンの出力軸にモーターを併設してアシストするタイプ。簡単にいうとモーターアシスト付自転車と同じ構造です。モーターアシスト付自転車は漕ぎ出しが非常に軽く、乗りやすいと評判です。ところが今回乗ってみて分かったのは、この構造は余り合理的ではない、ということでした。

モーターというのは構造上回転数に反比例してトルクが直線的に少なくなります。つまり低回転がトルクが太く、回転数があがるとトルクが細くなります。これは一見エンジンの低回転でのトルクが細い領域を補完しそうですが、エンジンというのはたとえば500rpmとかでは回らないのです。そういわゆるアイドリング回転以上で必ず回さないと止まります。モーターはスペック上0~1000rpmで最大トルクを発生するとなっていますが、実質上そのおいしい領域は使えません。

一応システム最大トルク17kgmは1000rpm~2500rpmで発生し、その後落ちるとなっています。ところが加速時はこの領域をはずれ、2500rpm~4000rpmを使うことが多いのです。ここにエンジンがメイン出力となっているIMAの矛盾があります。

普通のエンジンだと2000rpm~3000rpmを巡航時に使い、加速時はその上まで回します。これは回転数に比例して馬力が出るためです。

ところが前述したようにIMAでは2500rpmから先はトルクはどんどん低くなってしまうのでした。そうなると何がおきるかというと加速力が鈍るためにさらにアクセルを開け、エンジン回転数はあがりつづけ、ガソリンが消費されてしまうのです。


・2バルブDSIエンジンとSモード

さらに問題なのはエンジンが2バルブのDSIであること。このDSIは低回転での燃費特性を高めるためのツインスパーク+スワール効果が特徴ですが、高回転になるとその特長は生かせず単なる非力なエンジンとなることです。

オートマをSモードにするとそのデメリットは顕著となり、DからSモードにすると回転数が1000rpmほどあがります。つまりたとえば4000rpmだったのが5000rpmになるとしましょう。これを解決するためにシビックハイブリッドに搭載されているDSIエンジンは4500rpm以上だと「高回転モード」というのに移行して吸気バルブのリフト量を増して2バルブエンジンでは考えられないほどの高回転、6000rpmを超える回転数まで回しきります。とはいえ、当然燃費がいいはずがありません。

このときとってもアバウトな燃費計では2目盛、おそらく5km/Lほどを指しているようです。


・充電するために走っている?

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Sモードが面白いのは回生ブレーキです。アクセルオフをするとエンジンブレーキが効くような逆Gがかかりますがこれが回生ブレーキで、実際にはモーターを使って発電してます。Dモードではこの回生ブレーキは弱めで、エンジン車のエンジンブレーキくらいです。Sモードでは回生ブレーキは強めで、アクセルオフをするとエンジンブレーキよりも強い制動がかかり、発電量は最大となります。

これを繰り返すとどうなるかというと、あっという間にバッテリーがフル充電となるのです。

バッテリーがフル充電になるとよさそうな気がしますが、ここで大きな問題が。それは過充電しないためにそれ以降、バッテリーに充電されないのです。つまり回生ブレーキは作動せず、ハイブリッドの特長である(運動)エネルギーの回収できなくなるのでした。


・バッテリー(残量)を温存したがる?

ではこの満充電になったバッテリーを有効に使いたいのですが、街中ではおいそれと使えません。アクセルを軽くあけるだけでは少ししかモーターアシストが効かず、使う量より貯まる量の方が多い状態。

そしてアクセルを強めにあけ、ハーフアクセル以上にするとはじめてモーターアシストが全開になるのですが、今度はそれに呼応してエンジン回転数が3000rpm以上になるという始末。そうでした、このIMAはエンジンが主体なのでした。

説明書によるとバッテリー残量計はだいたい中央付近になるように調整されるとのことですが、街中を走るだけでは中央から落ちることはありませんでした。

美瑛から白金温泉にいく長い上り坂で、なるべくモーターアシストが最大になるようにアクセルをあけた結果、残り2目盛まで減らすことに成功しましたが、そのときの燃費はどうも5km/L前後の模様。5目盛りを切るとモーターアシスト量がだんだんと減っていき、2目盛になるとモーターアシストがゼロになり、どうアクセルをあけようがモーターが動作しません。つまり貯まった電気を完全に使い切ることはどうやってもできないようです。


・実はバッテリー容量が小さい?

バッテリー残量を2目盛まで減らしても、丘を越えて山道をアクセルオフで下っているとものの数分で満充電されます。そこから推測するとどうやらバッテリーの容量が少ない模様。となるとモーターを最大に使い続けると数十秒でバッテリーが空になるのでしょうね。


・IMAの考え方とは

現行シビックは通常1.8L~2.0Lのガソリンエンジンを搭載します。全長は4.5mの3ナンバーボディ、車両重量は1200kg~1300kgですから、軽いとはいえません。さてこの車で燃費を伸ばすにはどうしたらいいのか。

その問いへの簡単な答えが、「排気量を小さくしちゃおう」です。つまりシビックのボディにフィットのエンジンを搭載するのです。ボディに対して適正以下の排気量の小さなエンジンを搭載するのは燃費向上の常套手段ですが、高速走行時や山坂道の場合はアクセルをあける結果となりかえって燃費が悪化してしまいます。

そこで回生ブレーキを使って回収したエネルギーを電気としてためて、小さなモーターでパワーを補うことでアクセルの開けすぎによる燃費悪化を防ごうというのがこのIMAの狙いです。ですから結果としてはMサイズセダンでありながら1.3Lクラスの燃費を達成できます。

つまりモーターにより加速力があがるとか、驚異的な燃費を生み出すとかそういった類のものではありません。あくまでもシビックとして普通に走れてフィットの燃費、というものです。


・プリウスとの違い

ここがモーターメイン、つまり電気自動車に発電機としてのエンジンを搭載したトヨタプリウスとの大きな考え方の違いです。プリウスのエンジンは、特に初代は発電機としか機能せず、モーターで走行しているときもエンジンは発電しつづけ、その出力は走行には使わないというものでした。THS-IIになってからエンジン出力を走行にも使うようにもなりましたけど、メインはモーターであることには変わりません。そのためモーターは強力でバッテリーも大容量のものを積んでいます。

toyota.jp プリウス > 機能・メカニズム

優劣はつけがたいのですが、トヨタの方が専用シャーシに強力なモーター、大容量バッテリーと明らかにコストは高そうです。


・ホンダの考えるハイブリッドの未来

これについてはまた次回、じっくりと。