月刊アスキー(ascii):年間1000億円をたたき出すガンダムという巨大ビジネス

かなり煽りっぽいタイトルの付け方ですが内容は非常に濃く、ページも多く割かれていました。

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ガンダムに興味がある人、巨大ビジネスに興味がある人、1000億円稼ぎたい人は必見です。

目次は以下。「ネットでちょい読み」で垣間見することができます。

ガンダムという巨大ビジネス

●Contents

 ・コンテンツ長寿化のカギ

  「必然」+「努力」で巨大市場を創造したバンダイ

ガンダムビジネスの「今日」、そして「今後」をよくまとめた記事で、マ・クベ風にいえば

フフフ、バンダイはあと10年戦える

わけです。

しかしながらどうやって1000億円ビジネスになったかという分析である「コンテンツ長寿化のカギ」についてはちょいと疑問符が。
(以下、超長文です。心して続きを読んで下さい)

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分析によると「ハリウッド型モデル」で、スポンサーは作品に口を出さず、商品と作品は切り離すことでクリエイター(アニメのスタッフ)は作品性を追求しつつ、スポンサー(バンダイ)は商品開発を平行して行うことでビジネス規模を拡大しているというもの。

これはガンダムシリーズを昔から知るものにとってはまさに寝耳に水。たしかに現在はそうかもしれない。しかし29年の歴史の中でそうであった時期というのは短く、最近のことでしかないです。

(ファースト)ガンダムの途中からビックリどっきりメカが多発、ザクレロとガンタンクの宇宙での戦闘、しかもザクレロのカマ対ガンタンクの手じゃない手での殴りあいに至っては世も末。しかしこれも「毎回やられメカを出せ」という当時のスポンサー(クローバー)の意向です。

g111.jpg (JPEG 画像, 147x100 px)

この傾向はZガンダムにおいても続き、ガンプラ化が遅れて十分な数、売れなかったので放送延長が決定。しかし物語的に延長することが無理だったので主要メンバーを全員殺し、カミーユは発狂。主人公を入れ替えてZZ(ダブルゼータ)シリーズをはじめてます。

さらにいえばVガンダムにおいては以下のようなことが発生しており、富野監督自身がカミーユ化する結果に。

Vガンダム論 第二章 ガンダムの終焉

ところが、93年1月時点で、富野監督はバンダイの役員の厳命を受け、宇宙戦艦を登場させる必要に迫られ、結果として、バイク戦艦を登場させることになる。

「もう一人の陰のプロデューサーがいるわけです。それは当時のバンダイの人物なんですけれども、その彼が強権を発動してきたために、バイク戦艦みたいなバカなものまでださなければならないことになったわけです。

製作が始まった頃になて、僕は生まれて初めてバンダイ本社に呼びつけられて、その役員から直に「戦艦を出せ」と言われました。
「本当に戦艦を地上でも浮かせて飛ばすというのなら、バイクだって空飛んでいいんでしょう?」と言ったら、「飛ばしてよ」と言われ、「本当ですね」という話になりました。

そんなふうに、『Vガンダム』にはもう一人の、絶対権力を発揮できるプロデューサーともいうべき人物がいたのです。だから、そういう形で作られたものが、あらゆるデザイン論の中に現れてきたというのは、あれは基本的にバンダイの仕事です。それは強権発動であって、「それをやってくれなければ、あんたには降りてもらう」と言われました。本当にバイク戦艦でいいのかと言ったら、「かっこいいじゃないですか」という返事でした。

総括すると、

ガンダムの世界

バンダイ帝国はその後、サンライズの株式の大半を買い占めて、事実上サンライズを子会社にした(「逆シャア」公開時)。強大な権力を手に入れたバンダイ社員は富野御大に向かって、あろうことか 「ストーリーなんかどうでもいいんです、30分のCMだと思って…」 と口を叩き、御大を激高させたという。近年、ガンダムWやSEEDに5機のガンダムが登場するのも、すべてバンダイ側の意向によるものだ。

ということで、従来のロボットアニメ同様「30分のCM」なのです。ハリウッドムービーのような作り方?はてはて、そうじゃないんじゃないの?と感じます。


【ガンダムは失敗作】


ガンダムが29年間連綿と続き、成功を収めた理由について。それはもちろん製作に関わった人の努力、才能はありますが、それ以上に「運」によるものが大きかったのではないかと思います。

アニメの歴史をひもとくとあの時期にあのスタッフが結集して、あの内容を作るというのは必然ではなく単なる偶然です。偶然という言葉よりも「運命」といった方がいいかもしれません。

ガンダムはテレビアニメ作品として考えた時には失敗作です。失敗作というよりも、大失敗作です。

まず視聴率がとれませんでした。

一部のコアなファンの人気はとれましたが、おもちゃのメインターゲットである子供の人気はメタメタです。

おもちゃが売れないからスポンサー(クローバー)が介入行動を開始しました。それがグフ以降に見られるやられメカの大投入です。さらに合体シーンを毎回入れなければいけなくなり、実際シリーズ中盤では意味も無く開始直後に空中換装の練習だとかいって、合体シーンをバンクで見せられる時期がありました。さらにGアーマーという合体メカまで出てきます。その挙句はザクレロといったモビルスーツでもモビルアーマーでもない、もはややられメカとしかいいようのないものまで出てくる始末です。

が、そのような努力を行っても子供からは見向きもされません。

その結果52話完結予定がいわゆるシリーズ打ち切り、43話に短縮されてしまいます。

そのためストーリーは後半において寸詰まり。急遽ニュータイプという概念を一気に加速させてア・バオア・クーを最終決戦の場として終わってしまいました。

その次がトライダーG7という子供向け作品が放送され、その後も最強ロボ・ダイオージャと正統派ロボットアニメに回帰することになります。

放送終了時点でガンダムの商品価値はほぼゼロ。そこでクローバーはガンダムの商品化権利をバンダイに売却します。

これのどこが成功作といえるでしょうか?作品としては高い評価を受ける一方、その後クローバーが倒産に至り、その原因を作ったとして非難されたんですから。


【ガンダムはガンダムだけで語ってはいけない】


ガンダムを語る上で、ガンダムシリーズだけを見ていてはいけません。

これほどまでガンダムがスポンサーの意向とは違う作品を作れたか、それはその前の2作品である「ザンボット3」と「ダイターン3」があったからです。

「ザンボット3」「ダイターン3」は同じ放送枠で作られたサンライズの作品。どちらも富野監督が関わっています。この作品は従来のロボットアニメの手法と取り入れつつ、一部にシリアスでヘビーなテーマを入れた、ちょうどスポンサーの意向と作品性のバランスがとれた成功作です。おもちゃは売れ、クローバーも大きく成長しました。その成功を後ろ盾に、一方でスタジオぬえから「宇宙の戦士」を紹介されたことでSF的要素を強めた作品にチャレンジしたのがガンダムです。

元々のガンダムの企画は「ガンボーイ」。敵は異星人の集団で、そのデザインの名残がドズルであったり、シャアの仮面に現れています。「銀河に向かって飛べよ、ガンダム」という歌詞がオープニング曲「翔べ!!ガンダム」にありますが、ガンダムは銀河どころか、地球の衛星軌道上までの話。この歌詞はガンボーイの名残なのです。名残があるくらい、ガンボーイからガンダムへの企画変更は急で、しかも短期間で行われたと考えられます。

ガンダムは子供にも受けませんでしたが、SFファンや同業者からも受け入れられませんでした。高千穂遥が酷評したのは有名ですが、それ以外の作家からも相手にされません。アイコンとしてスペースコロニーなどSF要素をいれてあるものの、ホワイトベースが地球を飛んだり、ロボットが変形、合体するところでまったくもってSF的にも受け入れがたいものだったのです。そういうわけで、ごくごく一部のファン層が熱狂的になったに過ぎません。

その後富野監督が作った作品は

イデオン

ザブングル

ダンバイン

エルガイム

とあります。イデオンも熱狂的なアニメファンがつき、映画にもなりました。ダンバインは小説家としてもデビュー、バイストンウェルというファンタジーSFの作品世界も広がっています。

しかしこれらは1000億円市場になるどころか、記憶の彼方に埋もれて続編も作られていません。

理由は簡単で、ガンダムを超えることができなかったのです。ガンダムを超えられないために、再びガンダムを作ることになったのがZガンダムというわけです。

実は一方でガンダムを超える作品は出ていました。それはマクロスです。

マクロスは高千穂遥率いるスタジオぬえが深く関わった作品。設定は完全なるハードSF、F14をモデルとしたリアルな飛行機が変形するというギミックで商品力を出しつつ、ストーリーは当時流行っていたラブコメの要素を入れたもの。そして声優と歌手とアイドルが作品の内外で同じというメディアミックスの手法を取り入れた、斬新な作品でした。

このマクロスは作画が安定しない、日曜日昼の放送にも関わらず民生ビデオの普及によりヒット。半年26話の予定を好評につき1クール伸ばしたものの、ストーリーは逆に大混乱。グダグダのぐずぐずになって終了したといういわくつき(放送期間延長によるストーリーの混乱は初代ミンキーモモでも同様に見られる)。しかしストーリーと設定を完全に2時間の映画に特化して再構築した映画は完璧な出来栄えの上、板野一郎や庵野秀明が関わった動画は当時アニメ至上最高とうたわれました。

こういった他作品のヒットを背景にあせったガンダムはZ、ZZに至ってストーリー的に破綻をきたして作品的にファーストを超えられることはなく終わっています。

その後も逆襲のシャア(映画)、F91(映画)と宇宙世紀もので、富野監督がやっていますが、いずれもファーストを超えることはできず。

その後富野監督が降り、ガンダムは宇宙世紀でもなく別のシリーズへと発散する結果となります。

【ガンダムは偶然の産物】

[珠玉のメンバーだけど寄せ集め部隊]

ガンダムに深くかかわった脚本家、アニメーションディレクター、メカデザイナーもガンダムだけをやったわけではありません。色々な仕事のうちの一つとしてガンダムに関わっただけです。しかしそのメンバーが凄かった。

安彦良和さんに大河原邦男さん。

脚本家には松崎健一(スタジオぬえ)、山本優、星山博之さんなど名だたるメンバーが揃ってます。

さらに音楽には渡辺岳夫さん。これらを「ニュータイプ」論を持ち出しまとめあげたのが絵コンテ1000本切りで有名な富野監督なのです。

ではこの同じスタッフで別の作品を作ったかというと、答えはノーです。つまり寄せ集めのメンバーで、混乱する制作現場をなんとかしながら出来たアニメ番組でしかありません。スタジオジブリのように才能があって気心しれた仲間達が良質なコンテンツを量産するという体制とは対照的ですね。

[ガンプラの大ヒット]

話は戻りますが、ガンプラはガンダム放送後に発売開始されました。その経緯は当初のスポンサーであるクローバーが商品化権をバンダイに売ったのが放送終了後だからです。もしもガンダムがザンボットやダイターンのようにクローバーを満足させるような作品であれば商品化権が譲渡されることもなく、プラモデル化されることはありませんでした。

実はガンプラが出たタイミングが遅かったようにも思えますが当時は民生ビデオが普及していない1979~80年。再放送されるのを待つしかなかったのですが、ガンプラは再放送のタイミングにはドンピシャだったわけです。ガンプラの出来はともかくガンプラブームが起き、狂ったようにガンプラを買うために毎週日曜日に玩具店やデパートに子供が殺到したわけです。

もしもこれが最初からバンダイがスポンサーだったとして、ガンダム放送時にガンプラがあったとしたらここまでガンプラブームが起きたかというと、それは分かりません。ただビデオが普及してなく、再放送とガンプラ投入時期とアニメ雑誌などが「ガンダム」をとりあげて一大ブームになってきた時期は丁度重なります。

[ガンダムというジャンル]

ガンダムは初代ガンダムの映画版の人気をピークとして、その後下がり続けます。何度続編を作っても受け入れられず、失敗を繰り返します。その結果、どうなったかというと宇宙世紀の続編を作ることが困難となり、ついには宇宙世紀をやめてしまうのです。

地球とスペースコロニーが舞台で、モビルスーツと呼ばれるロボットが出る作品

それが「ガンダム」と事実上再定義されました。つまりガンダムは作品ではなく、ジャンルとなったのです。ガンダムエースをみればわかるように、色々なガンダム作品がありますが、どれも世界観や歴史がつながっているわけではありません。上記の条件を満たせば、広義にはガンダムとなりました。

これも宇宙世紀の続編が成功していたら、ここまでガンダムが広義になることもなかったでしょう。

[結論]

つまりガンダムは失敗作で、失敗を何度も繰り返し、辻褄が合わなくなっていくのをなんとか合わせようとしたけど無理なので諦め、世界観を入れ替え、スタッフを入れ替えることで、結果的に広がっていった稀有な存在です。

一方で大ヒットしたマクロスがガンダムほどの広がりをもてなかったのは、そういった経緯をもてなかった、もつ必要がないほどの完成度があったからかも知れません。ガンダム以前の大ヒット作、「宇宙戦艦ヤマト」も同様といってもいいでしょう。

そういう意味で1000億円の市場規模をもつ作品となったのはまさに偶然の産物であり、分析ができるモデルケースとはいえません。

アナリストは当然「たまたま運が良かっただけ」とは書けないので仕方ないのですが、実際問題ガンダムはとても運が良かった、いいかえると「運命的だった」といっていいケースではないかと思います。

だから目次でいえば

「必然」+「努力」で巨大市場を創造したバンダイ

ではなく、

偶然」+「失敗」で巨大市場を創造したバンダイ

なんですよ。

もちろんアナリストは

認めたくないものだな・・・

とつぶやいちゃいそうですが。


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朝日ソノラマ編 | 公式ガンダム情報ポータルサイト「GUNDAM.INFO」 絵本

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